unico / はじまりの美術館(福島県)在籍

身の回りの雑誌や新聞の折込広告のなかから、写真や単語など求める情報を巧みに拾い出し、意思表示を行う。感情表現も豊かで、表情や身振り、言葉にならない声のトーンなどで表出される他、絵を描くこともそのひとつである。楽しみな行事、納得がいかなかったこと。日々の天気や、季節のうつろい。安斎の心の動きが色彩となり、大胆な筆致やストロークが繊細に重ねられていく。

「かぶと」と題された本作は、五月の節句の時期に、広告で見つけた兜飾りに触発されて制作されたものだ。色とりどりのクレヨンを用いた大胆な線のストロークを、画面全体に描き重ねていく作品が多い安斎だが、本作はクレヨンを小さな「たんぽ」に持ち替え描いている。青、黄、赤、水色、ピンク、黄緑。色は不均質に混じり合い、画面の底から、なにかとらえどころのない、いのちの源のようなものが湧き上がってくるような予感がするような引力のある作品だ。