彼女が作品のモチーフに選ぶのは雑誌に写る女性たち。この作品も雑誌の中から彼女自身が選んだもので、下書きは一切せず10Bの鉛筆のみで描いた。人物と背景との境目を塗り残しながら繊細に描いていくスタイルに、施設職員は一同大変驚いたという。
生まれつき耳に障害のある彼女は「自分の思いを伝える手段」として絵を描き始めた。日記を書くこともルーティンの1つで、日記が描き終わったあとは、施設職員や家族に見せてコメントを書いてもらう。彼女にとって、絵や日記は大切なコミュニケーションなのである。
Hiroko Kawabe
川邊 綋子
1987年生まれ 三重県在住 2006年から『やまなみ工房』に在籍 彼女は絵画、陶芸とその日やりたい創作に取り組む。絵画においては人、動物、風景等どんなモチーフも迷いなくペンを走らせる。全体像を描くと、ピンク、水色と大好きな自分色に染めていく。モノクロの作品では鉛筆一本を用いて、描いている。濃淡を使い分け塗り進めると、真っ白だった画用紙が次第に漆黒に艶めいていく。モチーフとなったものが、彼女の手によって新たな表情を見せ再構築された作品へと変わる。
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