【冨永愛インタビュー】私たちは、私たちの小さな力で、世の中を変えることができる。
第5回は、モデルとして、そして近年はエシカルライフスタイルSDGsアンバサダー(消費者庁)としても活躍する冨永愛(とみなが・あい)さんが登場。HERALBONYのクラシックシャツ「しかくとまるとさんかく」に身を包んだ冨永さんは、HERALBONYとどのようにして出会い、どう感じているのか? お話を伺ってきました。
ランウェイで知ったHERALBONYの存在
冨永愛さん(以下、冨永):私も去年秋にHERALBONYの存在を知って以来、何かご縁と感じていたので、お声がけいただいて嬉しいです。
HERALBONYと最初に出会ったのは去年(2023年)11月に開催された東京都が主催するファッションイベント「TOKYO FASHION CROSSING」でした。このイベントには人種や年齢、身体的特徴などさまざまな個性を持つモデルが参加したのですが、HERALBONYの契約作家でいらっしゃる郁美さんのアートで彩られた屋外のランウェイをたくさんのモデルと一緒に歩きました。Marinaさん、伊賀敢男留さん、郁美さんといった個性的なアーティストが登場して楽しいイベントでしたね。
そもそもアートには、作家の方に障害があるかないかの境界は存在しないですよね。作品自体の価値で評価されるものですから。その意味で、最初の出会いから私はHERALBONYのアートのファンだったと思います。
そのポーチが本当に素敵なんです。確か、6種類くらいあって。私はまだ2種類しか持ってないんですが、いつか全種類制覇したい(笑)。JALの飛行機に乗ると、CAの方にお声がけして違う種類のポーチを選ばせていただいたりもしました。
「HERALBONYのシャツ、クオリティが高いです。」
今日着ているシャツは、「しかくとまるとさんかく」という作品。オンラインストアに並んでいるシャツをいくつかピックアップさせていただいて、スタイリストさんと一緒に選びました。
ーー京都の「アトリエやっほぅ!!」で活動されている肥後深雪(Miyuki Higo)さんの作品ですね。どの作品も優しさがにじみ出るカラフルな世界が描かれているのですが、中でも「しかくとまるとさんかく」はシャツだけでなく様々なプロダクトになっている人気のアートです。
冨永:はい、とても素敵です。そして、アートもさることながら、シャツとしてのクオリティが高くて着ていてとっても気持ちいいです。特にこういうシャツは作りがしっかりしているかどうかが、スタイルに出ますから。服として、すごく丁寧に作られている! しかも、このボタン、よく見ると糸ボタンで、細部までとってもこだわられていますよね。
ーー気づいていただけて嬉しいです。HERALBONYは今まさに、世界に飛び出していくタイミングで、できるだけ環境負荷をかけない素材と工法を取り入れるなど、「細部」にまでこだわった「責任あるモノづくり」に挑戦しています。
冨永:世界に! いいですね! HERALBONYなら、世界を目指せると思いますよ。海外で展覧会をしたり、アパレル商品を売り出したり。とっても可能性を感じます。とにかくアートとして素敵だから大丈夫。「目指せる」というより、目指してください(笑)。
障害のある方のアートは海外ではとても盛んですし、まずは海外に出ていって、逆輸入の形で日本に戻ってくるのもよいかもしれません。私がまさにそうだったように(笑)。私自身、デビューは海外のランウェイで、日本には「海外でがんばっている日本人モデルがいるらしい」ということで後から逆輸入されたパターンです。日本は「新しい感覚のもの」を受け入れるのに時間がかかるところがあるので、まずは海外で「いいね」と評価してもらってからの方が、受け入れられやすいかもしれません。
ぜひ、海外に挑戦してほしいですね!気後れすることは何もないと思います。
ーー背中を押していただき、ありがとうございます!
社会は自分の手で変えると考えた方が「気持ちいい」
人生は流れですから、その流れの中でどう舵を切って流れていくか。とにかく、時代の波を正確に「感じること」が何より大事。「あ、今だ!」「いや、今じゃない」と波を感じることが、大切ですね。
波をキャッチして、どんなふうにライドしていくかーー私がデビューしたてでランウェイで闘っていた時は、正直若すぎて「波」を上手に感じ取れていなかったと思います。運とタイミングと、自分の努力。その3つが揃い、時代の波と自分の中のタイミングがうまく合致した時、物事はうまく前進していくのだと自分の人生を振り返っても感じています。
ーー冨永さんは日々、社会の問題にも取り組まれていて「ファイター」としてのイメージがあります。HERALBONYも社会運動とビジネスの狭間で、社会をよりよい場所にしていくために活動を続けています。「社会を変える」という点で何かアドバイスがあればお願いします。
冨永:ファイター!。でも、私、そういうイメージありますよね(笑)。
冨永:私がモデルとしてデビューした30年近く前は、アジアヘイトがあり、アジア人モデルが差別されていました。アジア人というだけで「ドレスを着てもセクシーじゃない」「黒しか似合わない」と言われることがよくありました。それがすごく悔しかった。
そうした状況の中で、私なりにいろんな方法で闘ってきたつもりです。例えば、本当に小さなことですが、セクシーに見える仕草を日夜研究し尽くしたり、キャスティングが決まるオーディションには何があっても絶対に黒の服を着ていかないようにしたり(笑)。そういう闘い方を日々続けていましたね。
そうした小さなことでも自分が何かを成していくことで、社会を少しずつでも変えていくことができる。そういう実践的なやり方の方が、ただ時代が変わるのを待っているよりも、はるかに効果があらわれるのが速いことも実感しています。
HERALBONYの活動は確実に世の中を変えることができると思います。世の中が変わるのを待つんじゃなくて、自分たちで動いて、自分たちの手で変えていく。それをきっと創業されてからの6年間で積み重ねていらっしゃったから、今の姿があるのだと思います。何と言っても、そういう能動的でポジティブなアプローチの方が「気持ちがいい」ですよね。
日々感じる鬱憤を、自分が上昇していくエネルギーに変えていく。それによって社会を少しでもいい方向に変えていく。そういうものだと思って、私自身はここまで歩んできたのかな、と。
じゃあ、それによって社会が変わったかといえば、「ちょっと変わったかな?」という程度かもしれませんが。でも、モデル業界に限っていえば、30年前よりもずっとアジア人が活躍できるようになっていると思いますし、何かしらの「変化」を起こす力にはなれたかなとは感じてはいます。
自分が受け取った「恩」や「運」をめぐらせていく
冨永:SDGsに関しては、自分の関心がもともと地球のことや自然のこと、もっと言えば自然環境が循環していくことにあったので、おのずと意識が向いていきました。自分の興味、あるいは「趣味」と言ってもいいかもしれませんが、それを突き詰めていくと「サステナブル」に辿り着いた感じです。SDGsには17のゴールがあるので取り組む対象はかなり幅広いですが、私が最初に関心を持ったのは、気候変動や自然破壊の問題でした。
一方で、公益社団法人「ジョイセフ」の活動もやっていて、そこでは途上国の妊産婦と子どもの健康を守る取り組みや、日本に向けても、SRHR(性と生殖に関する健康と権利)の取り組みを続けています。ファッションを通じてチャリティイベントをやりたいということで、お声がけいただいたのがきっかけでした。その当時は、「ファッションとチャリティ」って日本国内ではあまり繋がっていなかったんですね。海外ではすでに盛んでしたが。ちょうど息子が幼稚園くらいの年齢でしたが、子を持つ母親として途上国の妊産婦と子どもの現状を聞いた時に、「この活動は心から応援したい」と思って、ずっとご一緒してきました。
ーーどの活動も息長く続けていらっしゃいますよね。
冨永:私自身、相対的に恵まれた立場にある人が社会に貢献することは義務だと思っているんです。自分がいただいた恩は、次の人に贈っていく。そうやって恩は社会の中をめぐっていく。そんなふうに考えているので、私自身がかつて受け取った「運」も恩として社会に返していかないといけないなと感じています。
きっと私自身、探していたんだと思います、自分が受け取った「運」や「恩」を社会に返していく方法を。そのタイミングで出会ったのが「ジョイセフ」の活動であり、SDGsに関する取り組みだったりするわけです。これからの人生も一生、ライフワークとして「恩」を返すことは続けていくつもりです。
もちろん、一ファンとして、HERALBONYの活動も何かの形で応援できたらと思っています。まずはファッション業界に携わる者として、HERALBONYの洋服を世の中に広めたりするところをお手伝いできたら嬉しいですね。
ーーぜひ、お力をお借りしたいです。洋服としてもっともっとクオリティを上げていく伸びしろがあると感じているので、これからも応援していただけたら嬉しいです。
【衣装協力】
パンツ/MOLLIOLLI.(H3O FASHION BUREAU)
リング/HOORSENBUHS(LITTLE LEAGUE INC.)
シューズ/ADIEU(BOW INC)