愛するものの “副産物”だから美しいーー。異彩作家・岡部志士が愛する “コロイチ”とは

異彩作家・岡部志士(yukihito okabe)が描き出す色鮮やかな世界。実は、これらの作品は「副産物」であるということをご存じでしょうか?

クレヨンを塗って面を創り、色を消すようにニードルで削ってできたクレヨンのカスを集めて、粘土のようにして遊びながら作品を創る。 それが彼の制作スタイル。

実はその削りカスを集めてできた塊(かたまり)こそが、本人にとっての本当の作品なのです。本人はこれを「コロイチ」と呼んでいます。

作家・岡部志士さんの制作の様子を、そっと覗いてみましょう。

コロイチが生まれる過程

クレヨンを塗った際に出た、色彩鮮やかな削りカスを集めて
手で大切にこねて丸めます。
カスをどんどんまとめて、ひとつのかたまりに。

こうして何度も同じことを繰り返していくうちに、コロイチは少しずつ大きくなっていきます。

ものすごい集中力で集められるコロイチの素材

クレヨンを塗った部分をニードルで削り、そのカスをニードルの先端で集めることもあれば、
クレヨンをキャンバスに塗った段階で出てくるカスを、クレヨンの先端で集めたり、直接指で集めることも。
指についた(指紋の間に挟まった)クレヨンのカスも余さず収集。とても細かい作業ですが、ものすごい集中力で全部のカスを少しも残さずに集めていきます。
さらにはクレヨンの先から指で直接コロイチの素材となるカスを集めることもあります。

こうしてあらゆる方法でコロイチの素材は丁寧に集められていき、“結果としてできた絵画” は、ただの削り残しであり、岡部さん本人は興味はないのだそう。また、コロイチを生み出すための過程で生まれた作品のため、一般的な美術作品とは異なり、作品の「天地(※上下のこと)」も実際は存在しないとのこと。

そして毎日、さまざまな形のコロイチが生み出されています。

三つ目のコロイチや、水の惑星のようなコロイチも。

彼にとっては無駄なもの。それがこんなにも美しく、人の心を打つなんてとても不思議です。

美しく描こう!という意思が、限りなくゼロに近い絵画。副産物として、意図せず世に生み出された絵画ーー。岡部さんは余計な意思を持たずして、コロイチを作る過程における「楽しい / 心地よい」という自身の感情に純粋に付き従がっているように見えます。これがまさに、岡部志士の持っている「異彩」。私たちの心を動かす所以なのかもしれません。

作家・岡部志士の日常。

岡部さんは、カメラを向けられると

「はいチーズ!にっこり!」

と、元気な掛け声と共にピースをしてくれるというルーティーンがあります。 
動画の撮影中も、完成したコロイチを手に「はいチーズ!にっこり!」とカメラに披露してくれました。


自身の作品がHERALBONYのアイテムに起用されると、そのアイテムを着用した岡部さんの「はいチーズ!にっこり!」な写真が、福祉施設やご家族を通してヘラルボニースタッフの元に届きます。このような作家さんとのやりとりも、私たちの大きな原動力のひとつとなっています。

ベルメゾン×ヘラルボニーコラボレーションのアイテムをお渡しした際のお写真

岡部志士の原画とコロイチが、六本木ヒルズに登場。

そんな「愛するものの副産物」として生まれた原画作品と、彼にとっては本当の作品である「コロイチ」が、本日12/8(金)よりオープンする六本木POP UP STOREでご覧いただけることになりました! 原画作品に加えて、本物のコロイチを間近で鑑賞できる大変貴重な機会です。

「Hoo!Hey!」
「Scratch Works Sep 2023」
2023年に描かれた最新作「Scratch Works Sep 2023」は今回が初お披露目となります。代表作である「Hoo!Hey!」は非売品となりますが、今回の新作は展示販売に加えてHERALBONYオンラインストアでも購入が可能です。※こちらの作品は売約済みとなりました

これまでの展覧会でもさまざまな方の元へ旅立っていった、人気の岡部作品。描かれた時期によって作風が変化するのも魅力です。2011年に描かれた「Hoo!Hey!」と比べても、色の塗り方の変化がお分かりいただけるかと思います。

そしてこの度、制作風景を覗き見ることができる、スペシャルムービーが公開されました。岡部志士の「今」が映された原画作品やスペシャルムービーを、どうぞお見逃しなく。

▼画像をタップすると動画をご覧いただけます

この作家の商品が起用されたプロダクト

Yukihito Okabe


希望の園(三重県)在籍

1994年生まれ。自閉症。まつさかチャレンジドプレイス希望の園在籍。クレヨンを塗って面を創り、色を消すようにニードルで削ってできたクレヨンのカスを集めて、粘土のようにして遊びながら作品を創る。 最近ではボードやキャンバスに、クレヨンにポスターカラーを加え着色した面をニードルで削るといったように、制作方法にも幅がでてきている。実はその削りカスを集めてできたかたまり(本人はコロイチと呼んでいる)こそが本人にとって本当の作品であり、結果としてできた絵画はただの削り残したカスであり興味はない。 

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