音楽のように色を重ねて。伊賀敢男留は絵画でハーモニーを奏でる【異彩通信#7】
「異彩通信」は、異彩伝道師こと、Marie(@Marie_heralbony)がお送りする作家紹介コラム。異彩作家の生み出す作品の魅力はもちろん、ヘラルボニーと異彩作家との交流から生まれる素敵な体験談など、おしゃべり感覚でお届けします。「普通じゃないを愛する」同士の皆さまへ。ちょっと肩の力が抜けるような、そして元気をもらえるようなコンテンツで、皆さまの明日を応援します。
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こんにちは。Marieです。こちらは本日の異彩通信の主役となる作家、 伊賀敢男留(Kaoru Iga)さんのお写真です。
突然ですが伊賀さんのお顔、どこかで見覚えがありませんか?
実は、伊賀さんは2023年のキービジュアルで、ブランドの顔を務めてくださった異彩作家なんです。
金沢21世紀美術館でのプロジェクト「ROUTINE RECORDS」で楽曲制作もしてくれたキーボーディストのKan Sanoさん、岩手出身のモデルのチバユカさんと共に、堂々たる姿と余裕の表情でカメラに向かわれていました。(現場にいたスタッフもそのモデルっぷりに思わず沸き立ちました…!)
そんな伊賀さんは20年以上チェロを習っており、撮影現場でも演奏していただきました。チェロが音色のハーモニーを奏でるように、キャンバスに”独自の色彩感覚“で色を重ねていく、異彩作家・ 伊賀敢男留の制作風景を覗いてみましょう。
異彩作家・伊賀敢男留の一日。
「緊張しますか?」
制作風景を撮影するスタッフの問いかけに、真っ直ぐな眼差しで「はい」と答える伊賀さん。
しかし、制作を始めるとその緊張もどこへやら。
まずは、マジックと定規で、下書きの線を描いていきます。
引かれた線の上に、チューブから絵の具を絞り出したら…
ペインティングナイフを使って大胆に絵の具を広げていきます。この日は赤系の作品、青系の作品、白系の作品と、複数の作品を並行して、ものすごいスピードで仕上げていきます。
色彩を幾重にも連ねていく様子は、まるで音楽を奏でているかのよう。楽しげに、鼻歌や言葉をリズミカルに口ずさみながら制作を進めていきます。
自然と調和する、伊賀作品の世界。
制作がひと段落すると、近くの森へ。日課である散歩に向かいます。
登山もよくされるという伊賀さん。HERALBONYに起用されているアートを見てもお分かりいただけるように「リーフ」や「森」など、自然の中にあるものが題材になった作品が数多く存在します。木々の緑や空の青など、伊賀さんが日常の中で触れる自然から見つけた色彩そのものが作品に表現されています。
自然との調和を象徴する、伊賀さんらしさが詰まった大変印象深い作品をひとつご紹介します。森の中にたたずむ、絵画の重なりから生み出されたチェロのオブジェ。
こちらは、2023年10月に武蔵国分寺公園で開催された 「てのわ森の中美術館」にて展示された作品です。「チェリストの夢」というタイトルの通り、目を閉じ、森の中で自然とひとつになりながら、色彩豊かな旋律を奏でているチェリストの姿が浮かびます。それはまるで、自然の中から受け取った感性で、絵画やチェロを通して自分らしい旋律を奏でる、伊賀さんの姿そのもののように感じます。今にも美しい旋律が風にのって聞こえてきそうです。
花びらが青色の「ひまわり」
伊賀さんは、さまざまな手法で作品を描きます。絵の具を重ねていくこともあれば、オイルパステルで色を重ねて生み出される作品もあり、それぞれ作風も異なります。
この日はまず赤、オレンジ、ピンクなど、鮮やかな暖色のオイルパステルをキャンバスに乗せていくところから制作が始まりました。
その上に重ねるのは…大胆にも青。対照的な色を、迷うことなくぐいぐいとキャンバスの上に重ねていきます。
時に指も使いながら色を広げていき、完成した作品がこちらです。
赤やオレンジで描き始めたとは思えない、ブルーが印象的な作品に仕上がりました!
伊賀さんの作風は、異なる色彩を重ねて生まれる独特の奥行きが特徴でもあります。完成した作品をよく見てみると、上から塗られた青色の隙間から初めに塗った暖色系の色が覗いているのがわかりますよね。画材を何層にも重ねて生まれるグラデーションや質感が、彼の生み出す作品に唯一無二の個性を与えています。
そんな独自性が反映された、伊賀さんが描くひまわりを見てみましょう。最初はどこかで見たことがあるようなオレンジ色のひまわりでしたが、さらに色を重ねて完成した作品はこちら!
爽やかなブルーの下に鮮やかなオレンジが覗く、奥深いひまわりが完成しました。
伊賀さんが描いた手ぶくろが実物に
伊賀さんは、図形の組み合わせのような抽象画を描くこともあれば、さきほどのひまわりのような具象画も描くこともある作家さんです。
先月から始まっていた巡回企画展「ヘラルボニーと、気仙沼ニッティング。」では、伊賀さんの描いた「てぶくろ」の絵画をもとに、手編みのニットブランド「気仙沼ニッティング」の手によって実物を再現するというプロジェクトが始動しました。
「気仙沼ニッティング」は2011年の東日本大震災後、はたらく人が誇りを持てる仕事をつくり、地域に根ざした産業を育てていこうとスタート。宮城県気仙沼市を拠点に、編み手さんたちが一着ずつ丁寧に手編みで編んだセーターやカーディガンなどを届けています。
そんな気仙沼ニッティングさんの手により、伊賀さんならではの色彩の組み合わせや模様が細かに再現され、平面作品の「てぶくろ」が、実際に人の手を温める商品としてこの世に誕生しました。こちらの手袋は、HERALBONY GALLERYで数量限定で販売中。オンラインをご希望の場合は、気仙沼ニッティングwebサイト上のご注文フォームよりお申し込みいただけます。
原画作品はオンラインサイトで販売中
こちらの巡回展は、現在盛岡のHERALBONY GALLERYにて開催中。伊賀さんが描いた色鮮やかで可愛らしい「靴下」や「植物」「やかん」などの絵画も展示されており、これらの原画作品は、オンラインストアでもご購入いただけます。見ているとつい笑顔になってしまうような、温かみのある作品たち。ぜひあなたのお気に入りの1点を見つけてみてください。
>>Kaoiur Iga原画作品一覧はこちら
また、今回ご紹介した伊賀さんの1日を切り取った動画はこちら。どうぞご覧ください。
伊賀 敢男留 Kaoru Iga
1988年、東京生まれ。2015年にアールブリュット立川に出展したことをきっかけに、以後毎年作品を発表している。自閉症のため会話は苦手、それでも人が好きで初めての人に会うことにも躊躇はない。また音楽も大好きで、20年間チェロを習っている。
「聴く美術館」伊賀さんゲスト回もぜひご覧ください。
>>聴く美術館#3はこちら
この作家のアートが起用されている商品はこちら
>Kaoru Igaアートの商品一覧へこちらの写真は、ご自身のアイテムが初めてプロダクトになった際に、素敵な笑顔を見せてくれた伊賀さん。他のアイテムもぜひご覧ください。
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